いろはにほへと
「あんたは、ハルが好き。それでいい。俺はそんなあんたを好きになる。」
「…………へっ!?」
数秒送れて、声が引っ繰り返った私に、桂馬は面倒そうな顔をした。
「過剰に反応すんな、馬鹿が。演技上での事だっつってんだろ。俺はあんたのことが好きだっていう体(てい)で、あんたはいつも通りで良い。現役の高校生な訳だし。ただ条件が、二つある。」
顔から離れた桂馬の指が、Vサインになった。
「一つ目。俺の事を一番仲の良い、気心の知れた友達と重ねろ。」
「おお、おおお、女の子なのですが!?」
色々動揺することが多すぎて、解釈がついて行かない私は、無駄に「お」を連発する。
一番仲の良い、と聞いて、浮かんだのは、ルーチェオタクともいえるキラキラガール、澤田に決まっている。
「がんばって、重ねろ。んで二つ目が―」
次は何なんだ、と若干涙目で私は不安げに桂馬を見つめた。
「何があっても、絶対にハルを好きでいること。」