いろはにほへと
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陽の光の強さもやっと弱まってきた夕方。




「ひなのー、買い物行くの?」




既に、もう何年も前からの友人のように馴れ馴れしく私を呼ぶ、逃亡者トモハル。




「いちいち纏わりつかないでいただけますか。貴方の部屋は離れに宛がった筈です。」




お手製の猫の模様のエコバックを肩に引っ掛け家を出ようとしていた私は、振り返って縁側に座るトモハルにぴしゃりと言った。





「だってさ、あそこ、寂しいよ。しかも腹減った。今日は何のご飯なの?」





大人の男が、捨てられた仔犬のようにしょぼくれている。







だからって。




なんで、私が。




よりによって、こんなお洒落な、自分とは相反する男と夕飯をつつかなければならないんだろう。




前髪と興味がなかったせいで、よく見ていなかったが、トモハルは洒落ている人間のようだ。




あの服装をなんと呼べばいいのか、わからないけれど、とにかく都会に居るお洒落さん代表にしても、いいくらいだと思う。



一見シンプルなのに、よくこだわっている。。。と思う。






「夕飯、食べるなら、お金取りますよ。」





そう言って手を差し出すと、トモハルはひどくショックを受けた顔をした。





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