いろはにほへと
「大丈夫?」



彼氏役の人は、ダークブラウンの短髪。


桂馬のことも、トモハルのことも、知らなかった私が知る筈もなく。


そして、桂馬より、トモハルより、有名ではないそうだ(早川さん談)。


カメラも彼氏役の人よりも、私に集中している。


暗くなった道は、お祭りのような白熱灯に照らされていて薄暗い筈なのに。



照明のライトが自分に向けられていると、嫌でもカメラに撮られている事実を意識せざるを得ない。



「あ、大丈夫です。というか、、すいません…」



小さくなって謝るが、監督が何故駄目出しをしているかというと。


手を、繋ぐという行為が、あまりにぎこちないから、らしい。



ーだって、、男の人と手を繋ぐ、なんてお父さんとしかしたことないですー!!


心の中で叫ぶが。


ー違う。


直ぐに前言撤回しなければならないことに気づく。




トモハル、とも、手を繋いだことがあったんだ、と。


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