いろはにほへと
許した訳ではない。



不可抗力だと思う。


キスなんて初めてで、先日からどう処理していいか分からず、ずっと目を背けてきた。



なのに、桂馬はそんな私の努力を一瞬で泡にしてみせて、気持ちをぐちゃぐちゃにしていこうとする。



気持ちなんて一切入らない。

キスの意味もわからない

仕方も知らない。


何がどうなのか、わかんない。

どうなって、こうなるのか。

どうしたら、解決へと導けるのか。


誰よりも混乱してるのは、紛れも無い、自分自身だ。


そして、どうして、それをこんな。


批難めいた口調で、問い質されなければならないのかも、わからない。




「…る、して、、なんか、、、ない…です…」



蚊の鳴くような声の答えは、なんとか、形になって、空気を微かに震わせた。



「じゃ、俺もして良い?」



「?」


眉間に皺を寄せた私に。



「!」



降ってきたのは、吐息と、トモハルの熱。


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