いろはにほへと
-嘘。
私の恋い焦がれて仕方ない人は。
再会してから、私と距離を取っていた。
僅かだけれど、確かに保たれていた均衡。
「…っ」
なんで。
ねぇ、なんで。
怖い。
知らない人。
手に入らない人。
側にいて欲しくてたまらない人。
だけど、好きになっちゃいけない人。
忘れなきゃいけない人。
今日もし会えたらと願っていた。
最後に一目だけでも、見れたら良いと。
もう二度と、会えない人。
これで最後と、決めた人。
諦めるから。
最後は-最後くらいはと思っていた。
「っく…」
それは、こんな風な別れ方じゃなかった筈なのに。
こんなトモハルを、私は知らない。
彼から感じる、怒りにも似た感情。
首に当たるワイシャツ。
近過ぎる、香水の匂い。
絡め取られた、手首。
そのどれも。
私には、怖くしか、感じられない。
「ひなの…」
トモハルが、はっとしたように離れる。
転がり落ちていく、無数の雫は、頬を伝い、シートに吸い込まれていく。
私の恋い焦がれて仕方ない人は。
再会してから、私と距離を取っていた。
僅かだけれど、確かに保たれていた均衡。
「…っ」
なんで。
ねぇ、なんで。
怖い。
知らない人。
手に入らない人。
側にいて欲しくてたまらない人。
だけど、好きになっちゃいけない人。
忘れなきゃいけない人。
今日もし会えたらと願っていた。
最後に一目だけでも、見れたら良いと。
もう二度と、会えない人。
これで最後と、決めた人。
諦めるから。
最後は-最後くらいはと思っていた。
「っく…」
それは、こんな風な別れ方じゃなかった筈なのに。
こんなトモハルを、私は知らない。
彼から感じる、怒りにも似た感情。
首に当たるワイシャツ。
近過ぎる、香水の匂い。
絡め取られた、手首。
そのどれも。
私には、怖くしか、感じられない。
「ひなの…」
トモハルが、はっとしたように離れる。
転がり落ちていく、無数の雫は、頬を伝い、シートに吸い込まれていく。