いろはにほへと
なけなしのプライド
ー失敗した。
こんな歳になって、まさか、こんなに、心掻き乱される出来事があるなんて、思いもよらなかった。
今しがた、自分がしてしまった事への後悔の念が、津波のごとく押し寄せる。
ー泣かせた…
「信じらんねぇ…」
頭を冷やすために、思わずその場を離れてきてしまった俺は、不甲斐なさすぎて、道端で、自分の顔を両手で覆った。
情けなさ過ぎて、話せる気もしない。
ポケットから出したスマホで、孝佑にLINEする。
《ひなの、駐車場でまこちゃんの車にいるから、送ってあげて。》
直ぐに返事がくる。
《なんで!?俺らスタジオで待ってたのに!上がってくるんじゃないの?》
ーその予定だったんだけど…な。
「あー、失敗した…」
どうして、こんなことになってしまったんだろう。
事の発端は、俺の浮かれた態度だった。
夏になったら、ひなのに会いに行こう。
そう思って、それを目指して、きたから。
とりあえず、きっと怒っているだろうから、誤解を解いて、説明をしよう。
そんな風に考えてて。