いろはにほへと




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今年の夏の初め。


予定していた休みも、見送り。

浮かれ気分も、突き落とされて、ホント、最悪。




『なんで、ダメなんだよ。あのモデルはこれから必ずブレークする。今使っておいて損はない。』


まこちゃんは、繰り返し説得を試みたけど、頑として首を縦に振らない俺に、やがてこう言った。


『とにかくもう、俺は待てない。このままじゃ二進も三進もいかないし、上からも怒られるし、発売日は夏だし、pvの内容も夏だし、季節感とか変わっちゃうし色々困る!この際、新人でも何でも良いから、選んで、打開案を出せ!』



『今居るタレントに合う子はいない』


答えた俺に、分かり易く肩を落とすまこちゃん。



『じゃ、お前のイメージに合う子って、一体誰なんだよ?幻の人か?』



言われて、思案して。



『…中条ひなの』


ぽつり、零れ出た名前は、直ぐに空気に溶けて消えてった。




『中条ひなのって…ひなのって…中条…あああああの!?なんか暗そうな!?』



一度会っただけの人間の名前をしっかりと記憶しているあたり、さすがマネージャーだ。



『なんで彼女が…』




『冗談だよ。…でも彼女は光る。』



パイプ椅子に座り込んで笑った俺を、まこちゃんは、腕組みをして見下ろす。






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