いろはにほへと
ひなのを、俺の曲のPVにー?
残された俺が、事の深刻さを把握するのに、やや時間がかかった。
数分間、同じ姿勢でいて。
『ぴったり合う…』
思わず呟いちゃう俺。
いやいやいや。
ないだろ。
あの、どこかしら物事を達観していて、中々自分を出すことも出来ず、それでいて今の現状で満足しているような、天然記念物みたいな彼女を、世間の目に晒すことになる。
彼女は何よりも、人の目につくことを嫌う。
穏やかな日常を、また壊してしまう。
『駄目駄目。』
必死で、大人の事情とやらを押し込めて、自分を戒めるように首を振った。
『っつーか…』
うちのマネージャー一体何処に行ったんだ。
まさか、本当に行ったんじゃないだろうな。
いや、まさかな。
『いやそのまさかだ!』
慌てて、後を追うように、新幹線の手続きをして、まこちゃんの思惑を阻止しに出かけた。