いろはにほへと
========================




「なのに…」



わかってたはずなのに。


つまらない嫉妬。

つまらない独占欲。

それから、妬み。


意気消沈した今でも、自分の中で燻(くすぶ)り、どろどろと巡っている感情。



「ガキじゃねーんだから。」



自分自身に言い聞かせても、どうにもなりゃしない。


ひなののイメージ通りに、当たり障りなく、近づき過ぎることなく、時間は過ぎていく筈だった。


彼女の思い出に残る自分は、汚い自分じゃなく。

近所のお兄さん位でも良いから。

温かくあって欲しいという願い。


それを実現するために。




ー横から掻っ攫われたからって…



最初から俺に敵意剥き出しだった、阿立桂馬。

確かに、迷惑は掛けたんだけど。


プロ意識が高く、仕事の質も良い。

演技力も抜群だが、周囲へのさりげない配慮も、ストイックさも、お墨付きだった。

但し、意見ははっきりと言う。



それがひなのに近付くなんて。


俺ももっと考えてりゃ良かったんだけど…。


桂馬は、ガードが固い事で有名で、スキャンダルも少ない。


それだけに、変な信用をしていた自分が居た。
< 307 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop