いろはにほへと
桂馬は、流れるような動作で、ひなのを引き寄せ、その唇を奪った。

そして。

早朝、ひなのが赤面した時と同じように、背後に居る俺に勝ち誇ったように笑った。



俺の中で、プッツン、と、何かが切れた、音がした。




気がつけば。



ひなのを車の中で、押し倒していた。




なんで。


なんでひなのなんだろう。



どうして、俺は、ひなのにこんなに執着してるんだろう。




傷付けたくない。

そう思うのに。


自分の中で消すことのできなかった想いが、苦しげにのたうち回る。





もういい。



綺麗事とか、もういい。


要らない。



誰にも知られないで欲しい。

誰も知らないで欲しい。

誰も見ないで欲しい。









触れたい。








触れたい、触れたい。








好きだと言いたい。




そうして、楽になりたい。
< 311 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop