いろはにほへと
そして。
ー泣かせた。
苦々しく重い溜め息が、気付けば何度も落ちていく。
ぽろぽろと、ひなのの頬を伝って、流れていった涙が、脳裏に焼きついて離れない。
突然、持っていたスマホが震えて。
一瞬、孝佑がラインでも送ってきたかと思ったが、着信だった。
正直、今は、出たくない心境だったが。
「ーはい」
《お前今どこにいんだよ?!》
焦ったような、孝佑の声に、嫌な予感がした。
「どこって…」
《居ないぜ?》
「ー何が…」
問いかけながらも、塗り替えられていく感情。
狂いそうな想いから、不安へと。
《だから!ひなのちゃん、何処にも居なかったんだよ!!》
「……!」
《おい!聞いてるか!?》
スマホを耳に当てていた腕から、力が無くなった。
なけなしのプライドが、ギリギリのラインをずっと保っていた。
彼女から離れようと。
現実を見ろと。
それは全部。
彼女と、自分を守るため。
それが、壊れて絶たれた今。
果たして、自分に、彼女を追いかける資格があるだろうか。