いろはにほへと
さっきからすれ違う人たちが、私を見てぎょっとした顔をして行く。
夕方まではきれいにセットされていた髪は、涙で頬に貼り付いている。
服装は、自分のだから、桂馬曰く、ダサいらしい。
前髪でぐしゃぐしゃの顔を隠したいんだけど、撮影で切られてしまったから、かぴかぴになった部分を、手でなんとか手繰り寄せて前に持ってみた。
だから、きっと、余計に怖いのかもしれない。
けれど。
「うっ…うっ…」
今の私に、周囲を気にしろって言う方が無理な話だ。
駐車場から出て、めちゃくちゃに走ったせいで、道もわからない。
おまけに外は暗くなってしまった。
それでも、家に帰らなくちゃと思う気持ちなんか吹っ飛んでて。
ー怒ってた…
初めて見た、トモハルの知らない部分に、ショックを受けていた。