いろはにほへと
「それはさ、本人にそう言われたの?」


「…いえ…」


「じゃ、中条さんの勝手な思い込みってこともあるよね?」


ややきつめの口調で澤田が畳み掛けるように言うので、戸惑う。



「さっき私言ったよね?中条さんと友達になれて良かったって。」


「…あ、はい」



じぃっとキレイな目で見られると、未だに緊張が走る自分。


思わず背筋を正す。



「でも中条さんは、私がそう思ってたなんてわからなかったでしょ?物事はね、みんな同じ。伝えないと伝わらないの。」



「それは、、どういう…」



「自分から動かなければ、結局は全部自分の勝手な憶測ってこと。」



そう言って、澤田は人差し指をピッと立てた。



「事は勝手には動いてくれない。まして勝手に解決なんてこともしてくれない。だけど、無理矢理終わらせるんじゃなくて、ちゃんと丁寧に扱わないと、苦しいだけだよ。もしも思い通りの結果にならなくても、自分が頑張った上での結果なら、その時の苦しさは直ぐに薄れる。でも、無理矢理閉じ込めてしまった時の苦しみは、ずっと居座り続けるよ。」
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