いろはにほへと
「で、、でもー」
もう、遅い。
再び乾いた目に、涙が溜まるのに、時間は掛からなかった。
「ちゅ、中条さん?ごめん、言い過ぎた?」
ボロリボロリと大粒の涙で頬を濡らし、テーブルまで濡らす私の肩を、澤田がおろおろと宥めるように摩る。
「ーち、違うんですー」
私はまた必死でそれを否定する。
「も、う、最後なんです…、今日で最後っ、だったんです」
「え?」
きっと、もうー
「会えないんです…」
肩をヒクつかせて、うにゃうにゃと泣きじゃくる私に、澤田は解せない顔をした。
「ねぇ、中条さん…さっきからずっと引っ掛かってるんだけど、教えてくれる?」
「ー?」
首を傾げながら目を瞬かせて、涙を払い、一瞬だけ視界がクリアになった瞬間。
「相手の人って、どこの誰なの?」
澤田は至極最もな、そしてかなり重要な部分を衝いてきた。