いろはにほへと
「ーあー…」



正直、澤田にいつ言おうか、何度も迷ってきた。


けれど、余りに現実離れした体験をしたんだということを、後から嫌と言う程思い知った。


それこそ、夢みたいな話だと。


再会は絶対ではなかったし、トモハルがまた来るという確信もなかった。


そこで、澤田に話した所で、頭の痛い人間だと思われてしまうのではという恐れが芽生え、結局今まで話さずじまいだった。



「そんなに言い難い人なの?さては年上?まさかとは思うけど妻子持ち?さすがにその場合は前言撤回するわ…」



「ちちち、違いますっ!!」



言い淀む私に、澤田が勝手に決めつけていくので、慌てて両手を振った。




「…年上…ではありますけど…」



膝に視線を落とし、俯いたまま。



「あの、、、信じてくださいね…嘘じゃないので…」



そこまで言って、澤田を窺うように、上目遣いに見上げる。



「中条さん嘘吐けるタイプじゃないの知ってるから、大丈夫。」




しっかりと頷いてくれた彼女を前にして、私は意を決した。



「実はー」
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