いろはにほへと
「ー…とても信じられないとは思うんですが、去年の夏休みにひょんなことから関わる事になりまして…あの、、私、芸能とかに疎くて最初は全くわからなかったのですが…」



説明を試みてみるが、自分でも何を言ってるのかわからない挙句、澤田の呆然としていた筈の顔つきが、険しくなっていくのが怖い。



「後からルーチェっていうバンドのボーカルだったって知ったんですが…その時には既に遅くて…」




「ー何でもっと早くに言ってくれなかったの?」



冷ややかに聞き取れる、澤田の声に、自分の心臓がビクと震えた。

いたたまれなくなって目を合わせることができず、私は視線を逸らす。


ーそりゃ、怒りますよね…


澤田はルーチェの熱狂的ファンだ。

なのに、それを言わないまま、ルーチェの情報だけもらっていたのだ。


その上、好きだとか。



ー最低だ。



「っすいません!本当はもっと早くに言おうと思っていたのですが…」



折角、友達になってくれたのに。
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