いろはにほへと
罵られても当たり前だと、がばっと頭を下げた私だったが。
「ちょっと、中条さん!」
手に固いものが握らされ、驚いた私は慌てて顔を上げる。
「携帯貸してあげるから、今すぐ家に電話して!!」
「ーえ?」
どうして、と訊きかけてー
「いいから早く!」
有無を言わせない様子の澤田に言われるがまま、家の電話番号を押した。
ーな、何を言ったら良いんだろう…
《ーはい》
4コール目で母が出て、目的が分からない私は、一瞬たじろいだ。
そこへ。
「あ、もしもしー!こんばんは、初めまして。中条さんの友人の澤田と言いますー!」
澤田が、狼狽える私から携帯を奪い、余所行きの声で話し始める。
それを私はただ呆然と見つめていた。