いろはにほへと
ーどうしよう。
澤田の会話は、所々しか耳に入ってこない程。
ー怒らせてしまった場合、どうすればいいんでしょうか。
居た堪れない私は、途方に暮れ、しょげ返って項垂れる。
母と、澤田が何を話したかったのかは知らないが、そろそろ時間も時間だし、早く帰って来なさいときっと言われるに違いない。
ー嫌だな…
もっと晴れ晴れした気持ちで帰途に着くと考えていた私は、浅はかだったらしい。
あんな事があった後で、どんな顔して家に帰ればいいのか分からない。
かといって行くアテはない。
悶々としていると、突然通話していた澤田が立ち上がった。
驚いて見ると、携帯は閉じられて彼女の手の中にあり、終わったのだと悟る。