いろはにほへと


何故だかそれがすごく寂しくて、視界がぼやけ始めて。

今日は散々な日だと、何もかもが情けなくて嫌になる。




狭い階段ひとつひとつを下りていくのを、ひどく億劫に感じた。



あっという間に自動ドアを抜けて、外に出れば、生温い潮の香りを含んだ風に包まれる。



ここがどこだかは分からないが、幸い駅が道路を渡った先に見え、帰ることはできそうだ、と思った。


しかし。


鞄等貴重品は、スタジオにあった。と言うか記憶が正しければ、早川さんが持って行ってくれていた。


つまり無一文。


ー澤田さん、、お金貸してくれるでしょうか。


奢ってもらって、怒らせた上に、お金貸してくださいとか言ったらー



その先は、恐ろしくて、想像も出来ない。


だが、そうしないと路頭に迷うことになる。



どうせ嫌われるならこの際ー

< 340 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop