いろはにほへと


「何してるの?」



覚悟を決めて、駅とは反対方向へ向かう澤田に、声を掛けようとした私を、振り返って見た彼女は、怪訝な顔で言う。



「あ、えと…」


「早く付いてきなよ。」



「え?」



言われている事が理解できていない様子の私に、澤田は首を傾げた。



「もしかして、電話の内容聞いてなかったの?」



やがて、不思議そうに訊ねるので、コクリと頷いた。


瞬間、がしりと手首を掴まれる。



「へっ?!」



澤田は、まるで獲物を狙う捕食動物のように、逃がさないぞという不敵な笑みを浮かべ。




「今日はうちでお泊まり。じっくり聞かせてもらうからね!」




「ええええ??!!」




私を引きずるようにして、そのまま歩き出した。


< 341 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop