いろはにほへと
「何してるの?」
覚悟を決めて、駅とは反対方向へ向かう澤田に、声を掛けようとした私を、振り返って見た彼女は、怪訝な顔で言う。
「あ、えと…」
「早く付いてきなよ。」
「え?」
言われている事が理解できていない様子の私に、澤田は首を傾げた。
「もしかして、電話の内容聞いてなかったの?」
やがて、不思議そうに訊ねるので、コクリと頷いた。
瞬間、がしりと手首を掴まれる。
「へっ?!」
澤田は、まるで獲物を狙う捕食動物のように、逃がさないぞという不敵な笑みを浮かべ。
「今日はうちでお泊まり。じっくり聞かせてもらうからね!」
「ええええ??!!」
私を引きずるようにして、そのまま歩き出した。