いろはにほへと
「…あんま、嬉しそうじゃないネ、遥。」
パーカーのポケットに片手を突っ込み、もう片方でスマホをいじりながら、壁に寄っかかっていた政宗が、ポソリと呟く。
「いや、かなり安心してるよ。良かった。」
それは本心だ。嘘はない。ただー
「それとも、まだ見つからないモノがあるのかな?なくし物。」
手を組んで、俯いて座る俺に、降りかかる容赦無い政宗の指摘に、図星を突かれ胸が痛んだ。
政宗は普段ぼーっとしているが、意外と人を見ている。そしてその解析データは、なかなかどうして、よく当たる。
ーなくし物…
確かにそうだ。
それが思いの外、大き過ぎて、けどどうすることもできなくて。
「ま、まぁまぁ!ひなのちゃん、無事に見つかったことだし、お疲れ様会は後日また練り直そうぜ!」
返す言葉が見つからない俺に、助け舟を出すかの様に、孝祐が明るい声で呼び掛ける。