いろはにほへと
「ー遙…」
はは、と乾いた笑いが、自分から転がり落ちた。
「ただ好きな唄を好きなだけ歌っていた頃は良かった、ってあの時は思わなかったけど、振り返ってみれば思う。」
がむしゃらに、突っ走っていれば、結果は自ずと付いてくるという根拠のない自信だけを持って。
「まさか、こんな歳になって、こんな感情を持て余すことになるなんて夢にも思わなかったよ。」
壁は何度壊しても、目の前に立ちはだかる。
そして、その壁は、厚みを増して行く。
クリアしてもクリアしても。
「難しいことは増えていくばかりだ」
慣れた問題は回ってこない。