いろはにほへと
すっきりした顔でスタジオから出て行くまこちゃんに反して、残された俺には苦々しいのに吐き出せない空気が纏わりつく。

ー観れないんだっつぅの。


反抗にも似た感情で、心の中で突っ込んだはいいが、傍観者を決め込んだもう一人の自分が、子供じみてると嘲笑う。

良い歳して何やってるんだよって。

ーなんだよ、良い歳って。幾つだよ。幾つになったら良い歳になるんだよ。



「……ちょっと出てくる。」




嫌な空気を振り払いたくて、メンバーの誰にともなく声を掛け、まこちゃんの後を追うように自分もスタジオから出た。


「すぐに戻れよー」


孝祐の忠告に、片手を上げて応えながら。
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