いろはにほへと
出た所は、割と人通りが少なく、道路に面している。


と。

「あれ、携帯鳴ってる。私のじゃない。」



澤田が私を指差した。



「え…私、ですか?」


確かに、私の鞄から電子音が聞こえてくる。

慌てて取り出すがー


「つっ、使い方がわかりません!」


助けを求めるように、澤田に泣きつくと、彼女は慣れた手つきで指を画面にスライドさせて、耳に当てるよう促した。



「……はい。」


かけてくる相手など、一人しかいないのはわかっていたが、恐る恐る返事をする。



《緊急事態。ひな、今そこに迎えの車走らせてるから、着たらとにかく乗って。》


てっきりからかわれるような、いつもの調子の彼を想像していたのに、桂馬の声はいつになく低く真剣だった。



「……迎えって、、どうしてですか…?」






嫌な予感がする。


私の問いに、桂馬は、躊躇うような間の後、吐き出すように答えた。






《スキャンダルだ。》


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