いろはにほへと
「スキャンダル……」
余程慌てているのか、状況が深刻なのか、桂馬は詳しい説明もないまま電話を切ってしまい、私は良くない単語を繰り返した。
「どうしたの?なんて言われたの?」
澤田が、私の様子がおかしいのを心配して、顔を覗き込んでくる。
「迎えに…来るって…」
「は?何それどういうー」
「澤田さん…ごめんなさい…先に帰ってください。今日はもう行けないかもしれません。」
どう説明したらいいか分からずに、それでも澤田は関係ないから、私を置いて帰ってもらった方が良いだろうと思った。
「何言ってるの?ちゃんと説明してー」
澤田が困惑気味に眉を寄せて、私の両手を掴んだのと。
「君達!」
澤田の後方から、小太りの中年男性が叫んだのとは同時だった。