いろはにほへと


「…それは俺の口から聞くよりも、本人から聞いたほうがいいと思うよ。ただ、ちょっとヤバいかもね。売れてる時だからー」


悩ましげに片手ハンドルの桂馬兄。

私は心中でやっぱり、と思った。


桂馬はマスコミを気にしていないのかと思うほど、自由気ままに動く。今朝だって変装してたけど、跡つけられてたとすれば絶対分かっちゃうだろうし、そもそも、駐車場の一件だって、いやもっと前の図書館でだってー


「そんなの!あなたの弟が勝手にやってるんだから仕方ないでしょうよ!ちゃんと責任取らせなさいよ!」


色々思い出してしまい、ボンと噴火しそうな私に代わり、隣の澤田が吠える。


ーでも、桂馬くんは守るって言ってくれました……


気持ちに応えられるか、られないかは置いといて、その言葉を信じなくては…



「………え!?」


私が自分を奮い立たせようとした時、澤田に対してノーコメント、沈
黙を貫いていた桂馬兄が、素っ頓狂な声を上げた。



「何!!」



最早喧嘩を売ってるとしか思えない口調の澤田に、桂馬兄が、えっと…と口を開く。




「スキャンダルの相手は、桂馬じゃないよ?」
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