いろはにほへと
「じゃあ、暑いけど頑張ってくださいね、ひなのさん。」



父と私は乗るホームが違う為、改札をくぐった先で別れた。



「お父さんも。」



実は前髪が邪魔でよく見えないけれど、私は父が居るだろう方向へ手を振った。



と。


ドン!という鈍い音と痛みが走って、人にぶつかってしまったことを知る。




「す、すいませ…」



「前見て歩けよ、ブス!」




「ごめんなさい…」




とんでもないことをしてしまったと、ドキドキしながら謝った。


舌打ちの音が直ぐにして、前髪の隙間から走り去った大学生くらいの男の人が見えた。




このラッシュ時に、ふらふらしていた私がいけない。



皆、急いでいるんだろうなぁ。



私は早目に家を出ているので、いつも学校の門が開く時間には到着する。


一本遅れても、大して変わらない。




本当に申し訳ないことをしてしまった。




あぁでも、あの人、良い人だ。




ちゃんと前を見て歩きなさい、と教えてくれた。



知ってはいたけど、私は確かにできていなかった。



気をつけよう。



ありがとうございますと言えば良かった。



失敗しちゃったな。

< 4 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop