いろはにほへと
「それから、もう一枚の写真…」
めくった次は、さっきよりも衝撃的だった。
見開き一面になっている写真は。
ーあの時の…
今度は声すら出ない。
脳裏に蘇る、映像と感覚に、鳥肌が立った。
真夏だったから、朝早かったにも関わらず、照りつく陽射しが既に熱を含んでいて。
家を出たところで見つけた二つの車。
そのうちの一つ、開いたドアから身を乗り出したトモハルが、片手で私をふわりと抱き寄せた。
写真は。
その時の、だ。
かろうじて私ははっきりとは見えない位置に居るが、先程の写真と比較すれば同一人物だと思うかもしれない。
というよりも、実際にはページ的には最初に見せられた写真の方が後で、今見た方が最初に来る。
どう見ても関連付けているのだ。同一人物だと確信して。
「他のメンバーも居たみたいだし、那遥からは何の感情もここには無かったと聞いているから、そういう事実関係がないことは承知しているんだが……これは、貴女で、間違いないですよね?」
心がツキン、いや、ズキンと痛んだのは、豊橋社長が独り言のように呟いた言葉のせいだった。
ー那遥からは何の感情も無かったと聞いているから
なんで。
なんでショックを受けてるんだろう、自分は。