いろはにほへと
社長の掲げたタブレットに映るのは、泣いている自分ーいや、メイ。
どうしてPVだと分かったのかといえば、映像の枠部分に、【フローライトpv】と表示されているからなのだが。
こんなに自分が映っている、なんて、聞いていないし、観たのも初めてだから、信じ難い。
叶うなら、このPVは、ここの会社用で、市場には出回っていないという設定であれと願う。
「………と、いいますと?」
色んな事が頭を駆け巡っているのに、出てきた言葉が、かろうじて豊橋社長に訊き返す反応だったこと、褒めてあげたい。
「最初に見せた写真は、今の君とは似ても似つかない。二枚目の写真は、横顔だし、那遥の腕が邪魔でよく見えない。でもこのままだと君と那遥の関係は疑われたまま、なんです。」
「…は、そう、ですね。」
しかし、だめだ。
もう、なんていうか、さっぱり理解が付いていかなくて、こんな自分が嫌になる。
トモハルも、早川さんも相変わらず無言を貫いている。
社長の打開案のプレゼンが行われているというのにーしかもかなり自信作そうー二人とも全く浮かない顔をしている。