いろはにほへと






ゐつか、トモハルと見た藤の花の色が懐かしい。


ゐつか、トモハルと仰いだ、空の虹以上に綺麗な虹は見つからない。


ゐつか、トモハルと歩いた蛍の川までの道は、温かく。


ゐつか、出逢い、別れ、再会した庭に面する縁側は遠い過去の様だ。



ゐつか、聴いた唄は、切なく心を揺さぶり。


ゐつか、握った掌と掌、交わした言葉と言葉、絡んだ視線と視線ー


そして触れた唇は熱を持ったまま。



ゐつか、生まれてしまった感情が、痛い。


痛んで傷んで、蝕んで、熱くなって冷たくなって増えて。



ゐつか、トモハルが教えてくれた気持ち。




ゐつか、ゐつか、ゐつか、ゐつか、ゐつか。



なんでこんなに増えてしまったんだろう。




思い出が、いつの間にかたくさん出来て。


そのひとつひとつが、こんなにも愛おしく、辛い。



それを、誰の目にも触れないように、大事に、宝物みたいにしまっておく為には。


自分に何が出来るのだろう。
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