いろはにほへと
全部夢だったら良かったのにと、昔読んだ小説の中で使われていたフレーズ。
その時にはわからなかった思いを、理解する朝が来るなんて、自分は成長したものだ、と喜ぶべきなのか。
「…ごめんなさい」
両親の顔を見ると、何もかもが本当に申し訳なくて。
何もかも。
自分のトモハルへ抱いた気持ちが動力となって。
でもそれが周囲を大変にさせている。
ーこんな、親を困らせるようなことはなかったのに。
自覚なしに堪えていた涙が、どっと溢れ出て、母はそんな私を抱き締める。
「ひなのさんは、約束を守ったから良いんですよ、謝らなくて大丈夫。」
一番気になっていた父の反応が、優し過ぎて。
いっそ怒ってくれればと願うのに。
ふ、と微笑むから涙の量は増えていくばかり。