いろはにほへと
「ひなの、さんの事は…」
久しぶりに聞く、トモハルの声は、やけに馴染んで心地良くて好きで。
涙が滲みそうになるのを、必死で堪えた。
いつものふざけた声でもなく。
歌う時のような、綺麗な声に似て。
だけど、掠れていた。
続く言葉を、私は固唾を呑んで待つ。
自分は、何を、期待しているのだろうー
なんて言って欲しい…
「ーーーーー妹のように、思っていましたし、今もそう思っています。」
ガタン
「中条さん!?」
トモハルが真っ直ぐに父を見つめていたのかどうか。
私を見ていたのかどうか。
それとも目を伏せていたのか。
「ひなのさん、いきましょう。お母さんも。」
直前で逸らした私には、分からない。
「中条さん!まだお話が…」
「もう十分です。」
立ち上がった父に手を引かれても。
「ひなのさん。」
放心状態になったみたいに。
「行きますよ。」
真っ白で。