いろはにほへと
ー『妹のように、思っていましたし、今もそう思っています。』
豊橋社長じゃない。
誰か他の人の口からじゃない。
トモハル自身が、確かに今そう言ったのだ。
それ以外の感情はなかった、と。
「待って下さい!」
出口間際で、こんな展開になると思わなかった社長が、慌てて追いかけてくる。
「何がいけないんです?!何か気に障ったことがあったのなら謝罪します!ですが、那遥の答えは尤もですし、芸能界っていうのはそういう場所なんです!こういう問題一つで好感度が下がればやっていけなくなることだってありますし……」
「黙りなさい。」
ピシャリ、父は全員に背を向けたまま、強い口調でそう言った。
「僕等は、貴方達の世界の事は知らないし、知ろうとも思いません。」
父は首だけ振り返って、恐らくートモハルを見た。
「自分に嘘を吐く人間に、大事な娘を預けるわけにはいかない。」