いろはにほへと
「お父さん…お母さん…」
たくさん迷惑を掛けてー
「ごめ…「ごめんなさい。」」
ーーーーー
「ーえ?」
驚きで目を見開くが、何度瞬きしても、謝ったのは父の方だった。
「ーなんで……」
「ひなのさんを守るのは、僕達の責任です。」
私が訊き返すのを知っていたように、父は直ぐに答える。
「なのに今回僕は、許してしまったーこういうリスクも十分理解した上で、恐らく貴女はこの道を選ぶだろうと知りながら、ひなのさんに選択を委ねました。もしかしたらこれを機にー」
そこまで言うと、言葉を切って、父は空を仰ぐように上を向いた。
「貴女が世界を好きになれるかもしれない、と、そう、願って。」
父の髪を、風がまたふわりと掠めていく。