いろはにほへと
そして、直ぐにそれが間違いだと気づく。

何故なら実際には、父の髪はふわりとどころではなく、びゅう、と強く流されているからだ。

けれども、私にとっては、スローモーションのように見えたのだ。


ー世界を好きになるかもしれない


父の言葉が、自分の心を射抜くかのように、感じたから。



今まで一度もそんなことを訊かれたことも言われたこともなかった。


だけど、それは真実だった。



自分はー


この世界の住人とは思えず、馴染めず。


いつしか、切り離して考えて、傍観者を決め込んでいた。




「去年の夏から、ひなのさんは変わりました。」



そんな自分が、変わったのは。




「それはー」


まるで自分が主人公のように思えてきたのは。



「『彼』のおかげなんでしょう?」



トモハルのせいだ。



「僕は『彼』に会って、ひなのさんのプラスになると思いました。僕は、『彼』を信頼しました。それがー間違いでした」
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