いろはにほへと
「…ねぇ、ひなのさん…。僕はー」



少しだけ躊躇うような、そんな間を空けて。



「人と人との間に、隔たりなんて、ないと思ってました。けどー『要らない物』が有り過ぎて、境を作ってしまうことも、あるんでしょうね。」



父は切なげに、半分は私に、半分は自分に言い聞かせるように、呟いた。

途端に、ぼろぼろぼろと、熱い物が零れ落ちて行って、私はその場に崩折れた。



人と人との、繋がりというものが。

こんな風になってしまうのなら、最初からやっぱりなかった方が良かったんじゃないのでしょうか。


いつかは別れがくるのなら。


それがこんなにも苦しいのなら。



隔たりというものが、大きい世界の人達なら尚のこと。



多くの目に晒されて。

突き放されて。



思い出になることすら、許されず。


それを捨て置いて、逃げてゆく自分。


自分は、中途半端に子供過ぎる。


非力過ぎる。
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