いろはにほへと
「すみません…」
「お前の腕を見込んで、ルーチェを任せてたんだろ?今回のはお前のミスだ。責任は取るんだろうな?」
「いや、俺のミスです。」
社長が俯くまこっちゃんに言い寄るのを見て、流石に俺も立ち上がった。
そんな俺を見ることもせずに、社長は続ける。
「早川、ルーチェから外れろ。」
まこっちゃんが、はっと息を呑んだのが分かった。
思ってもみなかった、というのではなく、覚悟していたかのような、呼吸だった。
「社長!それは、俺…納得できません。今回のことは、俺の方に責任があります。」
「遥、やめろって」
まこっちゃんを振り切りながらした俺の抗議に、社長は振り返って、やっと目を合わせた。
「那遥。お前がどうやって責任取るんだ。」
「それは…」
言葉に詰まった俺の心の内を見透かしたように社長が笑う。
「ルーチェのハルを、『辞める』訳にはいかんだろう。那遥は暫くプライベートで最低限動くな。仕事にはきちんと出てもらう。ただ、記者からの質問には応じるなよ。…普段から露出が少なくて得したな。」
そう言い残し、豊橋社長は、部屋を出て行った。