いろはにほへと
『あんた達の都合で振り回しておいてそれはないだろ?!』
憤りを身体中に滲ませて、たった一人でここに乗り込んできた、いつかの桂馬の怒鳴り声が、耳に痛く蘇る。
最初から最後まで、挑戦的な目を俺に向け続けて。
《もう一度、言っていただけますか?!》
コメンテーターが、興奮した様子で質問し、並んで立つ監督や共演者に至っては、どうしていいのかわからない動揺した顔で、固まっている。
《だから、今、ルーチェのハルと話題になっている彼女は、僕のもんですって言ったんです。勘違いして報道しないでくださいね。あと-》
あの時と同じ目が、今、55インチの画面から、俺を捉えていた。
《ヒトの彼女、とらないで》
世間には、撮らないで。
だけど、これは、俺に向けたコトバ。
『ヒトの彼女、盗らないで。』
想いは放っておいたら腐って土に還るだろうか。
この、想いは。
いつか、、、褪せて消えてくれるだろうか。