いろはにほへと
苦しむのが覚悟できないのなら選ばない手もある
あの、騒動の後。
早川さんが、社長と連れ立って、自宅まで再度謝罪しに来た。
そして、芸能界と関わりを持たないという決定であれば、今迄の事は全部無かったことにして欲しいと。
つまり知らぬ存ぜぬを通し切ってくれ、ということだった。
他人の空似。
最初から、トモハルとの接点はなかったと。
会ったことすら、ないと。
ただの、一度も。
それから。
学校に、両親と共に事情を説明をしに行き-父は事務所通りに嘘を吐く事を嫌い、上の限られた人間にだけ、事実を話した-今までの生活態度と成績から、先生達も、こちら側の立場を理解してくれた。
但し、暫くは、校内の風紀をの安定を図るために、登校しない方が良いとの判断で、自宅謹慎に近い処遇だった。
受験生だけれど、何もしないで。
ただただ、朝になって、昼になって、夕方になって、夜になるのを、部屋の片隅で丸くなって見ていた。
将来、どうすれば良いのか、なんて。
もう、とっくの昔から、見えなくなっていた。
やりたいこともなくて。
ただ、進学だけを考えていた私に見える将来なんて。
何一つ、なかった。
世界が、嫌いだった。
トモハルに出逢う前と同じで。