いろはにほへと
蛍の川
妙な共同生活も、一週間も経てば、さすがに慣れてきた。



五月蝿い男にも、少し免疫がついてきた…様な気がするこの頃。





私は夏休みの宿題のレポートを書きながら、真剣にトランプタワーを作っているトモハルを盗み見る。





夕飯を終え、夜8時過ぎ。



「………」





トモハルは無言で、震える手を、トランプの頂上へ持っていく―



夢中になっている彼を横目に、私はそっと部屋を抜け出し、玄関へ向かう。






「あぁっっ!!!!」






そこに響いた悲痛な叫び声に、肩がびくっと震えた。






「落ちたー!!!あと一個だったのに!ひなのー!!!!!ひなのーーー!!!ひな…あれ?」






どっくどっくと心拍数が上がって、戸に手を掛けたまま、佇む私。





「ひなのー!?!?どこいった?!あ!!!」





トタトタトタと軽く走る音がして、直ぐに見つかった。





顔だけ振り返ると、トモハルが仁王立ちになり、腰に手を当てている。





「何処行くの!?俺を置いて!!!」





別に逃げようとかしたわけじゃないのに、何この言われ様。





私は小さく溜め息を吐く。





「蛍を見に川に…」




言いかけた所で、トモハルが「ずるいずるい」と猛抗議した。




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