いろはにほへと
「ー中条さんは、いつもそう…そうやって、自分を卑下するだけして、向上しようとしない。」
「ーえ?」
澤田が、キッと私を睨んだ。
「じゃあ何?私や、ハルや桂馬くんが、仕方なく中条さんと一緒にいると思ってるの?私前にも言ったよね?友達だって、好きだって、思ってるって。それが嘘だって言うの?偽善だとでも?」
「あの、いえ…」
「前から訊きたかったんだけどーハルが来た時、メイクしてもらった時、撮影の時、桂馬くんが中条さんの事が好きだって言ってくれた時、少しも、胸が躍ったり、ワクワクしたりしなかったの?」
「………」
「あのね、皆中条さんの事が心配で心配で仕方ないの!」
先日、澤田が怒っていると思った時と同じ声。
「だけど、いつでもどこにいてもずっと守ってあげられる訳じゃないの!」
両肘を抱えるようにしている姿は、自分の感情が暴れ出さないように抑えているかのようだった。
「誰かに守ってもらうばっかりじゃ、前には進めないんだよ?中条さん自身が、変わらないと。」
寒さ、というよりは、乾燥と陽射しの強さに負けた葉っぱが、カラ、と私の靴にぶつかる。