いろはにほへと
「ハルや、桂馬くんや、私が、守りたいって思う女の子は!相変わらず前みたいに自分の事が大嫌いで、他の人の気持ちも、疑ってるままなのかな!?」
わかる。
鈍い私でも、わかる。
澤田の目に、滲む涙が。
「澤田さっ…」
けれど、澤田はくるりと背を向けて、走って行ってしまう。
追いかけようと思うけど、地に根を張ってしまったかのように、足が動かなかった。
ーほんとうは。
誰もいなくなった中庭で。
俯くと、まだ、私の靴に寄っかかったままの、太陽に負けた枯葉と目が合う。
『中条さんとー友達になって、好きになって、すっごい良かったって感じてる』
『私前にも言ったよね?友達だって、好きだって、思ってるって。』
ー今でも、信じられてないんです。
こんな自分のことを。
好きだと言ってくれる人がいるなんて。
夢にも見なかったことが。
現実だなんて。