いろはにほへと
ほんとうは。



『前から訊きたかったんだけどー少しも、胸が躍ったり、ワクワクしたりしなかったの?』



戸惑いの方が大きかったけれど、全部。

自分の持っていなかったような、心が締め付けられたり、ふわっとなったり、軽かったり、重かったりする初めての感情が、毎日大量に投与されたみたいだった。


他人のートモハルの力になりたいと思ったのも、初めてだった。


毎日、ジェットコースターに乗っているように急上昇急降下の繰り返しだった。


でも。

その内、怖さよりも、頂上からの風景を、見てみたいと思う気持ちが上回った。


『いつでもどこにいてもずっと守ってあげられる訳じゃないの!』


守られている事にすら、気付かないまま。


自分から闘おうともせず、自分自身すら、疑ったままなのに。


てっぺんからの景色はさぞかし綺麗なんだろうと、調子にのって、背伸びしていた。


それは全部。



自分じゃないみたいだったから、できたことなんだ。

鏡に映る自分は、自分じゃないから。
< 482 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop