いろはにほへと
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「何度見ても中条さんに見えない。」
すっかり暗くなった道は、尚、仕事帰りの人が行き交っていて、都市部の人の多さが伺え知れる。
観光客も来る程話題になっているスクランブル交差点は、蟻のように続々と人が渡る。
私はそんな慣れない道をドキドキしながら歩いていて、澤田が笑いながら何度も振り返る。
いやな笑いではなくて、少し誇らしげなような、さっぱりした笑いだった。
「…私も、何度瞬きしても、世界が違って見えますし、首も顔もスカスカしてて寒いです。」
いつもヘルメットのように被っていた防御服が取っ払われた今。
心許ない私は、足取りも軽くはない。
「でも、すっごい似合ってる。」
今度は満面の笑みで、澤田が言うので、ここまでいくと、自分が照れてるんだか、嬉しいんだか、悲しいんだか、面倒なだけなのか、分からなくなってくる。