いろはにほへと
「めずらし…ルーチェが生放送でメドレー歌うなんてあんまりないけど…」


道行く人達も、足を止める人が増えて、色んな声が飛び交う。


「なんで?あの騒動から?」

「でも、あれガセだったって…阿立桂馬の方だったんでしょ?」

「いやなんかでもあれも怪しい展開だったよね。」

「いいじゃん、ハル好きだから、聴こうよ。」

「良い曲だよね」



でもそのどの声も。

頭の中で文字に変換出来ない。

認識出来ない。


聞き取れるのは。

トモハルが歌う唄だけ。

トモハルの目に、吸い込まれそうになる。



駄目だ。



「…行きましょう」


全身に抗って、掠れた声を、なんとか絞り出して。

動きたくないと懇願する脚を動かす。


このままじゃ、駄目だ。

ここにいたらいけない。



「中条さん、大丈夫…?」


大好きな声だけど。

耳を塞ぎたい。



「折角、忘れるって決意したんです。髪も戻らないんです。時間も、戻らないんです。だから、今は正直な所、まだ辛いですけど、、、ちゃんと前向きたいので、今日はこのまま観ないで、帰りたいんです。思い出位になったら、観れる日が来ます。いちファンとして。良いですか?」


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