いろはにほへと
「馬鹿野郎!!!!」
鬼の形相で飛んで来た社長は、来るなり、関係者の前で俺を殴りつけた。
「あ、社長!駄目です、駄目ですってば。」
新しいルーチェ付きのマネージャーや、スタッフが止めに入るが、社長は血眼で俺を睨め付ける。
「お前、こないだのスキャンダルからほとんど経たない内に何やってんだよ!どんだけの損失か分かってんのか!」
「商品!商品ですから!」
怒鳴りながら、再び殴り掛かろうとする社長を必死で宥めようとする周囲の人々。
「突然声が、出なくなったそうなんです。現に今も、ハルとは話せてないんです。何かの病気かもしれませんから、ちゃんと医療機関を受診してー」
俺は、切れた唇を舐めながら、傍観者のように、ふらりと突っ立ってるだけだった。
椅子を勧められた社長は、詳しい話を進めていく内、次第に落ち着きを取り戻したが、終始貧乏揺すりをしていた。
ワザとだろうが、病気だろうが、商品としての価値が無くなったのは、変わらない。