いろはにほへと
桂馬の秋愁
「いいね、いいね。はい!目線流してー!!いいよ、いいよ。」
シャッターを切る音。
眩しい照明。
俺はその中で、作った笑顔を貼り付けたり、真面目な視線を送ったり、コロコロと表情を変えて見せる。
演技は子役の頃からやっていたけど、本格的に力を入れ始めたのは、中学の頃。
親にやらされたからやっているのか、そうじゃなく自分がやりたいのか、真剣に考えた。
爆発的に売れ始めたのも同じ時期だ。
「はい!お疲れ様!」
今はモデルの仕事。
雑誌の表紙と、巻頭を飾る写真の撮影とインタビュー。
「ありがと」
スタジオから出た俺は、喜一ちゃんからミネラルウォーターを受け取りながら、首をコキコキと鳴らした。
「…休憩挟んで、午後はバラエティ番組の収録。」
「ん。」
そして、このマネージャーの機嫌がすこぶる悪いのは、こないだ俺がやらかしたから。
それも映画の試写会という場所で。