いろはにほへと
俺はルーチェの歌が嫌いではない。

そして、今回もデモテープをもらっていたから、モデルのギラついた肉食系女子が合わないっていうのも分かる気がする。

まぁでもミスキャスなんて日常茶飯事なんだから、いちいち取り立てる方が馬鹿げている。

スケジュールだってこっちはなんとか取り分けて、中々良い仕事だし、受けたのに、まさかこんなに待たされるとは思ってもみなかった。

どっちかといえば、モデルより、俺が主役だし、俺がヘソ曲げちゃったらどうにもならないのに、そこらへんは、俺の人徳というか…俺はそういうことで降りるとか、止めるとかはしたことないから、誰も心配しなかったのかもしれないけど。

この世界では、仕事を貰えるだけ有り難い。
だから、こちらの意見や我が儘を通したりするのではなく、俺はあくまで演技をする人間なんだから、監督や脚本家の思い描いた通りに出来たら、それが最高なんだと思っている。たまに意表を突くのも面白いけど。

それにしたって、今回の撮影は、延び過ぎだった。

喜一ちゃん程ではないけど、俺にだって堪忍袋の緒ぐらいあるっつーの。
< 517 / 647 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop