いろはにほへと
それで、やってきたのが、ドのつく素人。

挙動不審、カメラ慣れどころか、人慣れしていない女。

女子高生とかいうけど、女子高生っぽさがない。

ただーキレイだった。

それは否定しない。

彼女が、スタジオ入りした時、空気が停止した。

俺達はそれなりに女優とかモデルとか見慣れてるから、余程のことがなければあんな風にはならない。

裏も表もない。

凛とした美しさを感じた。

もしも笑顔だったなら、それは破壊級。

だけど、残念ながら彼女は笑わなかった。

かと言って、俺の中で、何かが弾けたとか、一目惚れしたとか、欲しいと思ったとか、そんな馬鹿馬鹿しい事実はない。

スタジオ入りしてから何時間待たされたんだよっていう位だったから、苛々も最高潮。
帰ろうかと本気で考えていた。

挙句来たのがどっから掘り出してきたのか分からない新人で、なのにルーチェのハルが現場に見に来てるなんて、怪し過ぎるだろ。

俺としては、ハルの仕事への姿勢にムカつきを覚えていて、その腹いせに、ハルのお気に入りらしいひなのをからかうーその程度のつもりだった。
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