いろはにほへと
寒い、朝だった。
見上げる雪空は、どうしたって私の心を晴れさせてはくれないし、緊張を和らげてもくれない。
数ヶ月前よりも、少し伸びたとはいえ、首筋は冷えて。
歩きながらマフラーを巻き直す。
大学受験の日を迎えて、私は今日一日で、今迄やってきた全てが、とりあえずの区切りをつけるんだと思った。
「雪…降るでしょうか…」
一人言ちた瞬間、ポケットが震えて、スマホを取り出す。
「澤田さん…」
ラインなるものを使いこなせない私は、いつもメールか通話でやり取りしていて、澤田も仕方なくそれに付き合ってくれている。
【受かったら焼き肉食べに行こうね。】
気が早い内容が、澤田らしいと笑みが零れた。
と。
再び、画面がメールを受信したと表示する。
今度は桂馬からだった。
【力抜いて行ってこい。】
二人共私立大学を受けた為、受験自体は終わっていて、発表は確か明日だ。
私も私立は幾つか受けたけど、本命は国立大学だったから、今日の受験は私のみとなる。